Introduction
『LOCO DD 日本全国どこでもアイドル』 | |
Dorama & Documentary...
「嘘」と「本当」の絡み合いに探る 地方アイドルの「現在」と「未来」! |
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ロコドルの虚実皮膜 日本のアイドルシーンの中でひときわ異彩を放つ地方アイドル、通称「ロコドル」。その活動はメジャーの通例に縛られない手作り的なもので、それゆえ、思いがけぬ音楽の果実があちらこちらに実ってきている。 |
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鶴田法男(映画監督) 田中雄二(映画ライター) 小松隆次郎(新聞記者) 黒沢清(映画監督) 外山真也(映画ライター) にいやなおゆき(アニメーション作家) 宮田亜紀(俳優) 内藤誠(映画監督) 古澤健(映画監督) 太田耕耘キ(「ぴんくりんく」編集部) 佐々木浩久(映画監督) 大野博史(地方地下映画作家) 万田邦敏(映画監督) 渡部聡(会社員) 後藤護(映画・音楽ライター、翻訳家) 長宗我部陽子(俳優) 篠塚智子(30代・女性) 小出豊(映画作家) 193(主婦)イラスト付き テレビ『ほん怖』や映画『王様ゲーム』などで様々なアイドルたちと仕事をさせてもらってきた。役が掴めず台詞が覚えられないと悩んだり、初主演の緊張から肌荒れを起こしてしまったり…。でも、一生懸命な彼女たちの姿はカメラの前でどんどん魅力的になり輝いていく。それを作品に定着させられたと思ったときに映画の神に感謝してきた。 鶴田法男 映画監督。日本で最も知られたオムニバス・シリーズ『ほんとにあった怖い話』(91~、ビデオ/テレビ)の総監督として、Jホラーの作家たちに強い影響を与えた。主な映画作品に『リング0 バースデイ』(00)『おろち』(08年)『王様ゲーム』(11)『トーク・トゥ・ザ・デッド』(13)『Z~ゼット~果てなき希望』(14)などがある。 一見、三人の監督による三組の地方アイドルの紹介映画と見せかけておいて、実は、SF(少し不思議)話、青春ドラマ、そして西部劇と、監督自身の好きな(得意な?)世界に、彼女たちを取り込んでみせたところが、奇抜で面白い。 田中雄二 映画ライター・編集者。共同通信を中心に、雑誌やWEBで執筆、編集を担当。主な著書に『人生を豊かにするための50の言葉-名作映画が教えてくれる最高の人生の送り方』『外国映画女優名鑑』『外国映画男優名鑑』などがある。 オトメ☆コーポレーション、ラストライブの感動が蘇りました。 小松隆次郎 朝日新聞記者。長野総局在籍時にオトメ☆コーポレーション関連の記事も執筆。ラストライブも取材した。現在は社会部(法務省担当)。 “元気いっぱい”を売りにするって、本当に大変そう。それをまた意地の悪い3人の作者たちが、可笑しく、悲しく、時に残酷に撮るものだから、見ていてハラハラした。 黒沢清 映画監督。『CURE キュア』(97)『蛇の道』(98)『カリスマ』(99)『回路』(00)『アカルイミライ』(02)『ドッペルゲンガー』(02)『トウキョウソナタ』(08)『リアル~完全なる首長竜の日~』(13)『Seventh Code セブンス・コード』(13)『岸辺の旅』(15)『クリーピー 偽りの隣人』(16)などで国際的な評価も高い。2016年の『ダゲレオタイプの女』はフランス・ベルギーとの合作。最新作は『散歩する侵略者』(17)。 地方アイドルをコンセプトにしたオムニバス映画だが、それだけでなく“ドキュメンタリーとフィクションの境界線”というもう一つの共通項が効いているから、1本の作品として見ても世界観が見事に統一されている。個人的には、第2話の完成度の高さに驚かされた。とりわけジャック・リヴェットの映画を思い出させる公園のシーンは必見! 第3話の、両手で富士をかたどったポーズにも感心した。これほど映画(的なるもの)とアイドル(的なるもの)が幸せなかたちで出会った瞬間を他に知らないから。 外山真也 映画ライター。 近所の商店街の夏祭り。泥酔してカラオケ大会に乱入して、金魚すくいの水槽に足を突っ込んでヤーさんに有り金搾り取られた俺は、奇妙な見世物小屋に引っ張り込まれた。きれいなお姉さんが呼び込みやってて『LOCO DD 日本全国どこでもアイドル』という看板がかかってた。小屋の中では変な映画を上映してた。チアガールの女子中学生が富士山噴火を心配しつつお茶飲んでタイムスリップしてインディアン娘になったり。四人組のOLが笑いヨガやったりSF漫才やったり残業したり株主に覗かれたりリストラされて(注1)涙目で独白したり。ラッパー少女とゴスロリ少女が身長2メートルのおっさん(注2)に説教したりストーカーと踊ったり500円玉拾ったり福岡から西永福へテレポートしたり。なんだか分からないけど、とにかく変なんだ。出てくる女の子は結構可愛いけど普通じゃない。アイドルって、もっと癒しとかホッコリとか清純ツンデレってイメージだったけど、この娘たちは生っぽいんだ。生っぽいってのはエロい意味じゃなくて、生々しいって意味だ。俺はいつのまにかその娘たちと一緒に歌ったり踊ったりしてた。それをビデオカメラやスマホで撮影してる三人のおっさんがいて「ああ、こいつらが監督だな、こいつらが一番楽しんでやがる!」と、俺はだんだん腹が立ってきた。とたんにどうしても烏賊焼きが食いたくなって、俺は小屋から飛び出した。そこは盆踊りのやぐらの前だった。ちょうちんじゃなくてミラーボールが何百個もグルグル回りながら光ってた。オトメ☆コーポレーションのリストラ四人娘(注3)も、FantaRhymeのパンクメイドな二人も、3776のチアリーダー富士山ちよのも踊ってる。周囲ぐるりが観客席で、白鵬や稀勢の里や朝青龍が四股を踏みながらサイリウムを振っている。武道館でアイドルと歴代横綱と一緒に歌って踊れるなんて夢みたいだ。と思ったら嬉しくって目が覚めた。潰れたコンビニの駐車場で、財布は無くなっていた。 にいやなおゆき アニメーション作家。武蔵野美術大学講師。 注1:オトメ☆コーポレーションのメンバーは「リストラされた」わけではありませんが、「1000人動員目標不達成で自主退社」だと長くなり、文章の勢いを削ぐので、このような言葉に替えたものと思われます。 3監督がどんな女の子たちに興味を持ったのか、まずそこに興味を抱いた。3監督が選んだだけあってタイプは全然違うけどみんな魅力的。彼女たちのパフォーマンスや素の部分を観ている間に、自然と彼女たちをもっと深く知りたくなった。フィクションとドキュメンタリーの構成がこれまた三者三様で深く見入ってしまった。それぞれの形で彼女たちも監督の要望に応えているし、それは監督の予想を超えてきたんじゃないかな。アイドルの苦労と輝きはやはり胸を打つのだ。 宮田亜紀 俳優。『INAZUMA 稲妻』(05 西山洋市)『先生を流産させる会』(12 内藤瑛亮)『ファーストアルバム』(16 頃安祐良)ほか、出演作多数。 ビューティ・ペアやキャロルを監督した者としては、いま、「ロコドル」という形で、アイドルを撮ることができた監督たちが羨ましい。三者三様、虚実皮膜の面白さがあった。 内藤誠 映画監督。1936年愛知県生まれ。東映入社後、1969年「不良番長」シリーズで監督昇進。『番格ロック』(73)以後フリーに。プログラムピクチャーの大ベテランである一方、近年も『明日泣く』(11)『酒中日記』(15)といったインディーズ系作品を監督。衰えを知らぬ創作力で若い映画人の尊敬を集めている。脚本家、作家、翻訳家としても著名。 島田元監督の『富士消失』には軽くショックを受けた。神出鬼没・正体不明の「山泥棒」が歴史を超えて跳梁暗躍し、あの富士山を盗んでしまう(まさに富士消失!)のだが、そんな怪物を追跡するのがひとりの記憶を失った少女である、という物語の荒唐無稽さは、やがて「山泥棒」とは実は「映画泥棒」であることが明らかになるに至って(いや、これは妄想かもしれないけど)、壮大なファンタジー、例えば『ダークタワー』や『指輪物語』のような目眩を僕にもたらした。観終わってしばらく経つが、 僕は茫然としながら考えている。しかしいまだ現実の映画泥棒の正体は明らかにはされていない。もしかしたら「よーい、スタート」と声をはりあげるあいつらの中に、映画泥棒が紛れ込んでいるのかもしれない。自らの正体を隠すためならば、自分自身が何者かであるかについての記憶を消去するくらいのことはやりかねない、映画泥棒はきっとそんな怪物だ。そんな怪物を追跡するバウンティハンターたちは、よほどの度胸があるに違いない。『LOCO DD 日本全国どこでもアイドル』という企画は、そんな恐れ知らずの猛者たちによる中間報告であるように思えてきた。 古澤健 映画監督。1972年東京都生まれ。近作に『今日、恋をはじめます』(12)『ルームメイト』(13)『クローバー』(14)『ReLIFE』(17)『恋と嘘』(17)がある。 なんだかよく分からないタイトルで、顔も名前も知らないアイドル? アイドルなのかどうかも分からない女の子たちの映画でしたが…、 太田耕耘キ 「ぴんくりんく」編集部。映画『色道四十八手 たからぶね』(14)製作・配給。 3人の監督がフリーハンドで撮った自由なアイドル映画でした。改めて映画の自由を確認しました。田中要次監督のは田中監督の人柄が出てて好感度高く、大工原監督は相変わらず演出がうまい。島田監督のは夢から現実に戻る時の構成が爽やかな印象を残します。 佐々木浩久 映画監督。『ナチュラル ウーマン』(94)『発狂する唇』(99)『血を吸う宇宙』(01)『トリコン!!! triple complex』(08)など。『ケータイ刑事』シリーズなどテレビ作品も多数。 地方で活躍するアイドルたちを、自主映画魂を持った3人の監督が撮るという企画を聞いて、岐阜で地下映画を作っている自分が応援しないわけにはいかない!と興奮を抑えられず見せていただきました。ドラマとドキュメンタリーの融合なんて、映画ファンにもアイドルを応援しているひとにも楽しんでもらえる、微笑ましく可愛らしいガンバレ映画になっているんだろうな・・・なんて予想は大きく裏切られ、なんじゃこりゃあっ!と驚愕、絶句しました。監督もロコドルたちも本気すぎる。お互いにヤっちまうつもりで向き合っている。真剣勝負すぎて、観ているこちらがたたっ斬られそう。安易な気持ちで観ることはおすすめできませんが、しかしこのチャンバラ、見逃しは厳禁です。 大野博史 地方地下映画作家。映画製作のほかにMKE映画祭実行委員などの活動により地下映画の普及に努めている。モノノフ(夏菜子推し)。 第1話のロコドル「オトメ☆コーポレーション」のリーダーは、「夢は武道館」と語る。しかしその語りが映画内で紹介されるとき、すでに「オトメ☆コーポレーション」というグループ自体がこの世から消滅している。映画の完成を待たずにグループは解散してしまったからだ。いったいぜんたい、このはかなさを観客である我々はどう受け止めたらいいのだろう。あるいは、このはかなさと常に隣り合わせなのがロコドルというものなのか。解散から始まるアイドルオムニバス映画。第2話と第3話に登場するロコドルたちは、もちろん解散、あるいは活動休止はしていない。しかし、彼女たちはその不安と意識的・無意識的に常に闘っているように見える。彼女らが夢を語る(語らずにはいられない)のは、それ故だろうか。第3話のドラマ部分はまさに夢の話だし、夢の中で主人公のアイドル(3776井出ちよの)は、消失した富士山を求めて彷徨う。静岡出身のロコドルにとって、富士山は心の支えであると同時に、おそらく自分自身を投影した偉大なる存在なのだと思う。だからロコドルにとって、自身が富士山的存在になることと武道館でライブ公演することとは、きっと同程度の野望であり、夢であり、目指すものであるのだろう。 万田邦敏 映画監督。『UNloved』(02)『ありがとう』(06)『接吻』(06)『イヌミチ』(13)『SYNCHRONIZER』(15)など。 ご当地アイドルという存在は知っていたが、正直あまり見た事はなかった。だけれど、この映画はアイドルに対する密着取材だけではなく、ドラマも織り交ぜた手法が斬新で面白かった。 また、監督それぞれにアイドルとの距離感も異なり、「LastDays~君といた場所」のオトメ☆コーポレーションはいわゆる一番アイドルグループぽく撮られていたし、監督の主観も結構入っていた気がする、、、「ファンタスティック ライムズ!」はFantaRhymeという2人ユニットのキャラが立っていてそれだけでも見ていて面白い部分が多かった。ドラマ部分は進行に合わせて現実と織り交ぜて進展して行くので、感情移入もし易く、働きながら踊って歌う彼女たちを自然に応援したくなるのであった。 「富士消失」は3776(みななろ)の井出ちよの見た感じ幼くロリっぽい所が一番の魅力かな? 楽曲も一番個性的でどこかで聞いた感じが無く、ユニークだった。ドラマ部分とドキュメンタリ部分の分け方も、はっきりしている分「ご当地=富士山」という意味や思い入れ部分で一番訴えてくるものがあった。映画を見ながら、昔、富士宮神社の裏手にある池で飲んだ富士の湧水の冷たくて美味しかった事を思いだした、、、その池がタイトルの「湧玉池便り」も改めてCDで聞いてみたい気がした。 第二弾があるなら、違う県でご当地色豊かで地元を背負って頑張ってる子達の笑顔と光る汗を見たい気がする、、、 渡部聡 会社員。 トライポッドではないが「3」つの事例があると大体物事は立体的に立ち上がってくるものだ。だからこの「3」本立てのドラマ&ドキュメンタリーを観れば地方アイドルの実情がよーく見えてくる……なんて思っていると、ヤられる。これはアイドル映画の体裁を借りたラディカルな実験の場だ。ラストの島田元に至っては、静岡のアイドル3776(みななろ)と若松孝二『処女ゲバゲバ』を解剖台の上で出会わせてしまった。さあ、何が起きるかは映画館でのお楽しみ。 後藤護 映画・音楽ライター、翻訳家。コメント中で触れられている大和屋竺脚本作品『処女ゲバゲバ』(69 若松孝二)に影響を与えたフレイザー「金枝篇」(国書刊行会)の翻訳校正を担当中。 アイドルは超能力者だ。 長宗我部陽子 俳優。映画・ビデオシネマ・テレビなど、多数出演。大工原正樹監督作品『姉ちゃん、ホトホトさまの蠱を使う』(10)主演。最新作は高橋洋監督作品『霊的ボルシェビキ』(18)。 アイドル万歳!みたいな映画かなという予想は覆された。むしろ、アイドルに対して一歩引いてしまうような人ほど楽しめる作品になっていると思う。作り手と彼女達の綱引きがスリリングで、刻々変化する両者の表情が見逃せない。それぞれの勝敗含め見終えた後に反芻したり議論するのも楽しい。 篠塚智子 30代・女性。 傑作『スチュワーデス物語』がそうあるように、アイドル映画『LOCO DD 日本全国どこでもアイドル』もひりつくほど残酷で、境界がほどけるほど危うく、いやらしいほど奇天烈なのに、彼女たちの存在は少しも傷つくことがなくぴかぴかに輝いています。 小出豊 映画作家。『こんな暗い夜』『お城が見える』。 |
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Last DAYS~君といた場所~ 「あるよ」を流行させた役者として知られるBoBAこと田中要次が選んだのは、出身地の長野ゆかりのオトメ☆コーポレーション。作品完成前に全員脱退というアクシデントに見舞われながらドラマを超える現実に誠実に向き合い、苦難を克服して作品化した。 |
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ファンタスティック ライムズ!
※ファンタスティックとライムズの間は半角スペース |
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富士消失 80年代の自主映画シーンで名を馳せ、脚本家としても知られる島田元は、静岡は富士山のアイドル3776(みななろ)。各界で絶賛されたアルバム「3776を聴かない理由があるとすれば」をヒントに、現実から夢の世界へと越境する。 |
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2017 LOCO DD 製作委員会 |
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